「あなたが遅すぎて、一緒に寝るのが自然だって言うの。」
由利の言葉が零れたとき、私はまだ彼の匂いを指先に感じていた。午後中洗っても洗っても消えない、泰允の香り。
友だちの彼――よく知れば知るほど、もう目を背けなければいけない人。それなのに由利は微笑みながら言った。遅すぎるから、一緒に寝るのが自然だと。
彼女が投げた最初の輪
裏切りは煌めく刃のように、いつも予告なしにやってくる。
由利は私に先に打ち明けた。泰允が最近変だって。メッセージを避けるようになったし、夜の関係も冷めたって。
彼女の瞳が揺れた。
「あなたが男目線で、正直なこと言ってよ」
私はそのとき、泰允が私の腰を抱いた手の感触を思い出していた。
先週、飲み会のあてがなくなった私たちは泰允のワンルームへ向かった。由利はとっくに家に帰り、私たちは二人きりだった。
彼はビールを勧め、私は飲んだ。そして最後の記憶は、壁に映った私たちの影がひとつに重なった瞬間。
「これはダメ、本当にダメ」って自分に囁いたけれど、もう遅かった。
彼の吐息が私の首筋をくすぐるとき、私は由利の顔ではなく自分の欲望を思い浮かべていた。
なぜ私たちはそうしたのか
心理学者たちはこれを「タブー興奮」と呼ぶ。誰かのものだからこそ甘くなるもの。
特に友だちの彼氏は、社会のタブーの結晶みたいなもの。「手を出してはいけない」という警告が出ているほど、私たちは深く潜り込む。
泰允はただの男じゃなかった。由利が語ってきたすべての物語を共有してきた、育ててきたロマンスの主役だった。
だから私は彼を通じて由利の一部を手に入れることができた。
彼女が感じる快感、彼女が受ける愛の温度。
私はそれをこの手で確かめたくて、気が狂いそうになった。
真実を隠す方法
それから一ヶ月、私たちは完璧な三角のバランスを作り上げた。
泰允は相変わらず由利の彼氏で、私は相変わらず彼女の親友だった。ただ、隙あらば私は彼のベッドシーツで由利の匂いを探し回った。
彼女の香水、シャンプー、そして肌から漂うなじみの香りが混ざり合っていた。
ある日、由利が泣きながら電話してきた。泰允に他の女がいるような気がすると。
私は彼女をなだめながら、同時に泰允にメッセージを送った。
「今夜はダメ。由利が疑ってる」
その瞬間、私は気づいた。私たちが隠している真実は単なる裏切りじゃない。これは狩りだった。
由利は餌を投げた狩人で、私は隠した牙を剥き出した獣。
彼女が知っていたという証拠
そうして二ヶ月が経ったとき、由利が私に静かに言った。
「私も見たことがある。あなたたちが」
私は息が止まりそうになった。でも由利は続けた。
「でも……知らないうちに興奮しちゃって。私の彼があなたに触るのを見るのが」
彼女の瞳が光った。
私たちは睨み合って、同時に笑い出した。
ああ、だから私たちはいまだに友だちでいられるのね。
同じ闇の中で育った、お互いの悪い本能を見抜く動物たち。
私たちみんなの結末
泰允は結局私たち二人とも去っていった。
「これは複雑すぎる」
彼は私たちの闇を抱えきれなかったのだ。
でも私たちはお互いをより強く掴み合った。
もう私たちの間に秘密はなかった。
由利と私は時々彼を思い出す。
私たちに触れた彼の手、私たちの間にはさまった彼の体。
そして私たちはお互いに触れる。
「これは泰允のせいだ」って言いながら。
でも私たち二人とも知っている。
真実の果ては単なる裏切りじゃないってこと。
私たちが欲しかったのは愛じゃなく、欲望の証明だった。 誰かのものを奪う瞬間、私たちは初めて存在を感じた。 それが人間の最も致命的な虚栄ってものね。
あなたもそうだった?
今この瞬間、あなたは誰かのものを欲していないだろうか。
友だちの恋人、同僚の成功、あるいはただ誰かが持つ幸せ。
そしてその欲望を「偶然」か「お酒のせい」でごまかしていないだろうか。
裏切りには必ず二人の加害者がいる。一人は行為を犯す者、もう一人はそれを望む者。