グラスの向こうから冷めた視線が「今日は……家に帰りたい」そう呟いた瞬間
ジュニョクがぼそりとそう言ったとき、私はまだ紙袋1杯分の焼酎を残していた。23時47分、弘大の前の居酒屋。彼はレジへ向かい、私の肩を軽く叩く代わりに両手を後ろに組んだ。店の入り口でちらりと振り返る。目が合ったかと思うと、すぐに顔を背けた。わずか0.8秒。その刹那が私の腹を串刺しにした。階段を降りながら、彼は一度も振り返らなかった。私はスマホを取り出した。「もうすぐ着く?」と震えながら打ちかけた。けれど彼は急かすこともなく、ただ歩いて行く。頭の中で「どうして?」が千の破片に裂けた。でも実際に口に出したのは「気をつけてね」だった。
お腹が空いたときのように、身体がうずうずする
私が欲しいのは彼の身体じゃなくて、私に向けられる彼の視線なの。瞳に映る私が熱を帯びていなければ、私は存在しない気がする。
その夜、家に帰っても私は鏡の前に立った。ブラウスのボタンを一つずつ外しながら、なぜこんなに惨めに見えるのか分からなかった。彼は私を見なかった。だから私は自分の身体が見えなくなったような気がした。
欲望って、こんなに歪んでいるのだろうか。誰かに求められなければならないほど、私はその人に求められたくなる。まるで逃げるウナギのように滑り落ちる欲望、掴めないからこそ切実になる。
ソニの眠れない夜
ソニは先月まで、会社のサークルの先輩と4週間、あやふやな関係を続けていた。毎週木曜の飲み会。最終日、先輩は酔ったソニをタクシーに乗せようとした。でもソニはわざと足を踏み外した。先輩の腕にしがみつく。感じた——今だ。彼の手が腰を掠めた瞬間、目を閉じて待った。ちょうど3秒。でも先輩はソニを起こして、後部座席のドアを閉めた。 「ソニ、今日は……」 ドアが閉まり、タクシーが走り出す。ソニは後部座席で嗚咽した。 翌朝、会社で顔を合わせると、先輩は何事もなかったように笑顔で挨拶した。その笑顔があまりに残酷で、ソニはトイレでしばらく涙を堪えていた。 それ以降、先輩に抱きしめられる想像にふけってぼんやりする日が増えた。 なぜ私は熱くなるの?
ミンジュのファーストキスの残香
ミンジュは去年の夏、クラブで出会った男性と1ヶ月以上メッセージをやり取りしていた。初対面で彼はミンジュの頬をそっと撫でた。ミンジュは電流が走った。でもそれ以来、彼は一度も身体的な接触を試みなかった。 ミンジュはわざと遅くまで連絡した。「映画に行かない?」「ご飯行こう」でも彼はいつも慎重な返事だった。まるでミンジュを壊さないように。 ある日、ミンジュは彼に会った。映画館で手が触れた。ミンジュは手を振った。でも彼は素早く手を引っ込めた。ミンジュの胸がどんと沈んだ。 映画が終わり、彼はミンジュの額を軽くトンと叩いて別れた。 その夜、ミンジュは冷蔵庫のドアを開けては閉めてを繰り返した。 なぜこんなに未練になるのか。 彼に抱きたくないと思われる私を、私はもっと抱きたくなる理由。
拒絶されるほど燃え上がる欲望の奇妙な法則
心理学者たちはこれを「欲望の距離」と呼ぶ。相手が自分を望まなければ望まないほど、私たちはその相手を強く望む。食べられないリンゴがより甘く見えるように。 でもここにはもっと暗い心理が潜んでいる。 「君は欲しくない」という相手の表現は、実は「僕は君をコントロールできる」というメッセージでもある。そして私たちはその支配から逃れようとする。相手を自分が欲しくさせたいのは、主導権を取り戻したいという欲望の変奏に過ぎない。
あなたは今、誰かの拒絶に酔っているのではないか
私は彼の身体より、彼の「拒絶」に中毒していたのだろうか。彼が私を欲しない瞬間、私は内なる闇と向き合った。そしてその闇は私の身体をさらに熱くした。
ジュニョクが去った夜、私は鏡の前でブラウスを外してみた。私の身体はまだ生きていた。でも誰も見てくれなかった。その瞬間、私は気づいた。私が本当に欲しかったのはジュニョクの身体じゃなく、ジュニョクという枠に閉じ込められた私自身の欲望だった。彼に拒まれれば拒まれるほど、私は熱くなった。まるで火が大きくなるように。
そして今この瞬間、あなたは誰かの拒絶を待っているの?
それともあなたの拒絶を楽しんでいる誰かの瞳に、あなた自身を映しているの?