恋愛心理研究所 愛と恋愛の心理学

彼女の親友が“あの人”だと気づいた瞬間

「マークはゲイだから安心でしょ?」その一言で疑念を閉じ込めた僕を、ニット一枚と2cmの隙間が真実へと引きずり込んだ。

元カレ欲望ゲイのふり関係の二重性

「マークはゲイだから、信じられるよね?」

最初は何も思わなかった。ジスがにっこり笑いながら言ったとき、ダイニングテーブルの下で足を爪先でちょんちょんと突いてくる仕草さえも、いつもの光景だった。そうか、ゲイなら尚更安心だ。男の親友を恐れる理由なんてない。

でも不安はいつも微細な隙間から湧き起こる。マークが頻繁にジスの家に遊びに来るたび、彼女は冷蔵庫の前で缶ビールを取り出して「お兄ちゃん、マークが来たからピザ食べてくよ」と言った。

お兄ちゃん。いつもそう呼んでくれた。だから疑う余地なんてなかった。

ビールのプルタブがぱちんと開くたび、彼女の瞳はなぜあんなに煌めいたのだろう。


ニット一枚、揺れた信頼

問題は小さな一枚の服から始まった。去年の冬、ジスが選んでくれたニット。薄いグレーの、鳩のようにふっくらとしたカシミア。着てみると「すごく似合う」とキスまでしてくれたあのニットが、一ヶ月後、マークの体にぴったりとはまっていた。

「あ、これジスがクーポン使ってくれたやつ。安物だから気軽に着てみたら意外といいね」

安物?28万円の?

その日、僕は無神経に笑って頷いたけれど、頭の中で計算機が猛スピードで回った。同じ色、同じサイズ、同じ香り。ジスの香りが彼の服からした。


嘘の温度

人は本能的に温度を感じ取る。ジスとマークが並んでソファでフルーツを食べるとき、肩が触れ合う角度が恋人同士だった。でも僕の視線を受けると同時に二人はわずかに後ずさった。

温度差。2センチ、たったそれだけなのに、その短い空間がやけに騒がしく感じられた。

僕は知らないフリをした。なぜなら『マークはゲイだ』という一文が頭の中をぶんぶん飛び回り、逆に鮮烈な刺激になっていたからだ。タブーの魅力は触れながらも安全だという幻想だ。僕はその幻想の上に座ってビールをちびりと啜った。


鈍感な僕のための解剖学

嘘は関係の軟骨をへし折る。でも同時に、折れた部分を撫でながら痛みで濡れる感情もある。

僕はその隙間を覗き込む連鎖触手になった。

  • マークがトイレに行った隙、ジスがそっと彼のスマホを手渡すシーン。
  • 二人で分け合ったメガネ拭きのウェットティッシュ一枚、指先が触れるたび彼女の耳たぶが真っ赤になる瞬間。
  • 彼が「兄嫁は俺のタイプじゃないよ」なんてジョークを飛ばしたとき、ジスが笑顔の裏で呑み込んだため息。

すべては「お兄ちゃん、誤解しないで」という一言で蓋をされた瞬間だった。


事例1:スジン、29歳――“死んだ恋人”の復活

「彼は私に“もう男とは付き合わない”って言ったの。3年間それを信じて生きてきた。でも先週、彼のMacの検索履歴に【元彼と復縁プレゼント】【元彼の誕生日ケーキおすすめ】がズラリと並んでいたわ。

その夜、私は静かに泣きながらも、同時になぜ私は熱くなるのか自分に問いかけた」


事例2:ヒョンウ、31歳――“兄”という名の幽霊

「彼女はいつも彼のことを“兄さん”って呼んでた。気軽にね。でもある日、酒の席で彼女が“兄さん”って呼ぶ声が甘すぎたんだ。結局聞いたら、彼女は答えた。『ただ気楽だから』って。

でも後で知った。彼女がそう呼ぶたびに、過去のキスの味が舌の上に戻ってくるって」

ヒョンウはそれ以降、彼女が“兄さん”を呼ぶたび耳を塞いだ。それでも、彼女の瞳が彼を向くたび胸が熱くなった。


その夜、ベッドルームで

クリスマスパーティーのあと、僕たち三人は酔いでリビングに倒れ込んだ。ジスは「先にシャワー浴びてくる」と消え、マークと僕はぼんやりとテレビを眺めた。

そしてマークが呟いた。

「実は…俺も素直になりたくて」

僕は振り返った。彼の瞳が揺れていた。その瞬間、浴室からジスがスマホを置いて出てきたのではないかと思った。知らずに僕はマークの手首を掴んだ。冷えたビールを握った指が震えた。

ジスが戻ってきた。タオルで髪を拭きながら「なにしてるの?」と笑った。そして自然にマークの隣に腰を下ろした。

2センチの空間は消えた。彼女の肩が彼の肩に触れ、彼はそのままにした。僕はその短い接触が眼前で0.1秒で起きたことを知った。


密室の行方

すべてはそのとき決まった。ジスが「お兄ちゃん、今日はここで寝ていく?」と聞いたとき、僕は首を横に振った。マークは「タクシーで帰る」と立ち上がった。

でもジスが彼の腕を掴んだ。

「外、雪すごいし、ここで寝て」

彼女は僕を見た。いや、見たといっても瞳が透き通りすぎた。


朝、そして問い

午前5時17分。僕は眠れずにリビングへ出た。消灯された明かりの下、マークがソファに横たわっていた。そしてジスは。

ジスはマークのコートの上に身を預けて眠っていた。彼女の髪が彼の胸に散り、彼の手が彼女の腰の上にそっと乗っていた。呼吸までもが合っているように見えた。

僕は二人を起こさなかった。むしろ、もし本当にゲイカップルなら、この瞬間がより安全だったのかもしれない。

でも僕は知っていた。彼らがベッドの上で再び抱き合う光景を思い浮かべるたびに、僕の心臓がその欲望の中心に一緒にいたということを。


最後の問い、あなたへ

あなたも誰かの嘘を信じたことがあるだろうか。そしてその嘘が明らかになったとき、なぜより熱くなるのか今もわからないだろうか。

この記事を読みながら、あなたの目に浮かんだ人がいるなら、それはすでにあなたもその嘘の中に一緒にいたからではないか。

僕たちは皆、誰かの過去を抱えて現在を生きている。そしてその過去が揺れるとき、僕たちは不安になりながらもより熱くなる。

だから僕は今日もこの問いを思い浮かべる。

僕は本当に彼女の嘘を許せないのだろうか。それとも、僕のどこかがその嘘を信じ続けたいだけなのだろうか。

← 一覧へ