恋愛心理研究所 愛と恋愛の心理学

6年の愛、最後に彼が遺したまなざしは「私を殺さないで」

6年寄り添った人が最後に瞳で告げたのは「もう離して」だった。なぜ私たちは最後まで手を離せず、ゆっくりとお互いを殺してしまうのか。

長期交際別れの心理執着まなざし手放せない

##「それでいい」 車の中、ドアハンドルを握りしめてから47秒。エンジンも切れてしまった冬がすぐに凍りついた。ヒーターが止まると窓ガラスまで霜が降りる。私は息を止めていた。 「ねぇ、もう一度だけ?」 言葉は笑いかけて掠れた声で途切れた。彼は顔を背けた。そして目。その瞳が語った。 もう、お願い。 --- ## 瞳が告げた計算 お互いに気づいてからずいぶん経つ。残ったのは愛ではなく恐怖だということ。でも恐怖すら慣れてしまえば心地よい。2190日を共に生きてきた恐怖なら、それ自体が居場所だ。 > 最初から手を離せば終わりだと知っていた。振り返れば、私たちは互いを殺さないよう6年間耐えたのかもしれない。闇は終盤になるほど馴染んでいく。1年目の浮気、2年目の突然のセックスレス、3年目の理不尽な着信確認…すべてがなれの果ての暴力になっていた。 --- ## 消しゴムの名札 チェ・ジウは肩に昔の恋人の名前を入れたタトゥーを持つ女性だ。消しゴムで消したけど白紙には戻らない記憶のように跡が残る。 「それでも連絡は一度もない?」 2022年2月、私が聞いた。ジウはビールを一口飲んで冷蔵庫を開けた。中には鉛筆3本がくっついた付箋メモの束がある。 「ここで終わろうって言ったとき、あいつは私の手にこれを握らせたの」 メモは白紙だった。ジウはそれを1年間握りしめている。終わらせられない終わりは終わりではなくループ文の始まりになった。 --- ## キム・ドヒョンのGPS キム・ドヒョンは6年前の今日に別れた元カレの家の住所を今でも暗記している。Googleマップのブックマークはもちろん、移動履歴まで保存されている。 「あと一度通り過ぎれば終わるような気がする」 彼は月に一度、その家の前を通る。一度も見ずに通り過ぎたことはない。車は勝手に減速し、ハンドルに手が触れていないかのように進む。 終わらせない終わりは巻き戻しだ。彼は6年間同じ日に同じ声を聞いている。 ドヒョン、元気? 元気、でも今は違う。 それでも元気でね。 --- ## なぜ別れるのが難しいのか 心理学者たちはこれを『死角執着』と呼ぶ。終わってしまうのが怖くて終わらせられない心。私たちは大抵の関係を完成品だと誤解している。でも関係は生きている生き物。息があるほど死は怖くなる。 だから6年という数字は愛ではなく検死報告書だ。 > 終わらせられない関係は私たちを毎日少しずつ殺していく。終わらせられない私たちは結局お互いの殺人者になる。 --- ## 今夜、あなたのまなざし 今この瞬間、誰かがあなたの車の中で息を止めているかもしれない。あなたが気づかぬ間に、あなたの瞳が遺した言葉は何だったか。 離してだったのか、殺さないでだったのか、それとももう死んでるだったのか。 そしてあなたはまだ手にした消しゴムを離せずにいるのか。

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