「シャワー先に入るよ。暑すぎて」
無人島リゾートに照りつける午後の直射日光。29度のプールの波間に漂うスイカの香りと、ぴったり閉められたガラス越しに聞こえる彼女の笑い声。 イ・ドフンは水着のサイドポケットに手を出しては戻すのを繰り返し、結局スマホをタオルの下に深く埋めた。
汗と沈黙の4泊5日
出発前のジャムシルから、彼はもう知っていた。 ガールフレンド・ユリは7年間一度も疑ったことのない眼差しで休暇計画を気に入っていた。 チェックリストを暗記するように『人気店・フォトスポット・サンセットバー』と呟く彼女の声を聞きながら、イ・ドフンは反対側のシートに座りながら「もしかして会える?」というカカオトークをたった一人に残した。
プールサイドのバーで出会った彼女――白いビキニと真紅のストローハット。名前はジス。そう、『偶然』同じリゾートだった。 偶然と言えるだろうか? 透き通ったカクテルグラス越しに交わした視線は、互いの左手薬指に嵌められたリングを掠めて、静かに逸らされた。
2日目の夜、ユリはビーチパーティに先に合流した。「お酒に弱くて…」という言い訳は、もう彼女も知っていた。 イ・ドフンはリゾートの裏通りへ歩いた。ジスはすでに待っていた。熱帯の木陰の下、ビール缶が汗でぬるついた。 キスは突然、でもまるで慣れ親しんだように訪れた。 ただ暑くて、風が吹いていて、だからこれが正しいんだと合理化した。
帰国後、部屋の象
仁川空港を出てタクシーの後部座席に座った瞬間、イ・ドフンは本能的に片手でユリの手を握り、もう片方でカカオトークのトークルームを削除した。 『ジス』という名前が消えた画面を見つめながら、ふと冷たい汗が首筋を伝った。
もし見つかったら? いや、もう会わなければ?
家についてすぐ、ユリは旅の写真をノートPCにバックアップした。「今年も楽しめたね」と言い、イ・ドフンは「うん」と答えた。 その反応はタコのように鈍くなっていた。 ベッドに横たわりユリが眠ったあと、彼は洗面所で47秒間鏡を見つめた。 鏡の中の自分は、帰国疲れなのか、それとも罪悪感なのか、わからない赤い目をしていた。
どうしてまだ気づかないの?
32歳のリハビリセラピスト・キム・ユリは毎週水曜の午後、江南のカフェで同期と会う。 その日も友人から言われた。「見ちゃった、休暇中に。あんたの彼が女の人といたの」 ユリはカラメルマキアートを一瞬口に含んだ。味がしなくなった。でも首を振った。 「あれはピラティス講師だったって。現地人を追体験したんだって」 友人はそれ以上尋ねなかった。ユリは画面が消えたスマホを見ながら、通知が鳴るたびに胸がどきりと跳ねるのを感じた。 罪悪感なのか、それともまだ知らないからなのか。
タブーの甘さ、そして後味
これからの毎日曜日、イ・ドフンは目を閉じてあの日のジスを思い出す。 白いビキニを伝う水滴、彼女の吐息、熱帯フルーツの香りが混じった汗。 頭の中では自由で、現実では何でもなかったようにふるまう。 でも本当の欲望は回避だ。 何もなかったかのように、ユリが「ご飯にしよ」と言うたびに「うん」と答え、スマホの画面を伏せて、彼女の髪の匂いを嗅ぐ。 7年という重みが作り出す無感覚。その重みこそが防護膜となって、不倫を日常に塗り替えた。
私たちは皆、知っている。バレなければ事実は何も起きなかったという、恐ろしい真実を。
いつまで彼女の目を避けられる?
引き出しの中、パスポートの上にほんの少し埃が積もった。 ユリは今でも旅の写真を見ながら「来年はバリに行こう」と言う。 イ・ドフンはうなずく。そそくさと歯ブラシを手に取る。 鏡の中の自分が問う。
いま、誰に隠れているんだ? 彼女に? それとも自分を欺いているという事実に?
寝室の向こう、ユリの寝息が聞こえる。 沈黙は長く、夜は深い。 あなたの休暇は終わったけれど、不倫の余韻はまだ消えていない。