「ねえ、今日…もう一回?」
敏洙は答えず、布団を首まで引き上げた。背中越しに聞こえる息遣いだけで、終わったことが分かった。3か月ぶりにかろうじて達成したラウンド1。 そしてここが終点。
瑞妍はベッドの端で体を丸めた。クーリングローションの一滴が肌に染み込む速さよりも早く、愛が冷めていく。
眠った子どもたちの背後で沈黙が落ちる
「私が先に欲してはいけないの?年の差も、育児の疲れも分かってる。でも、ほんの少しでいい、感じていたいの。」
大学の同級生・敬俊&慧珍夫妻も同じだった。次男の入学式の夜、慧珍はそっと敬俊の腕の先を撫でた。
「今日は…特別に?」 「明日が登校初日だろ?疲れるだろうに。」
一言で終わり。慧珍はベッドの端で体を丸め、考えた。 なぜ結婚前は「また、いつまでも」だった約束が、40代になると消えてしまったの?
隠された欲望の糸の束
40代夫婦は「もう一回」を望まないのではない。ただ怖いのだ。
セカンドラウンドが始まれば、ファーストが 義務 ではなく 本気 だったと認めなければならなくなる。
だからラウンド1が終わった瞬間、素早く眠ったフリをする。お互いが まだ欲している という事実と向き合うことが怖くて。
地下鉄2号線、22時59分発
敏洙は毎晩同じ車両に乗る。同じ町で降りる女、相美(38)。最初は視線だった。
ある日、彼女が言った。 「今日は、まるで死んで生き返ったみたいな気分なの。」 「僕も…少しそうです。」
車両が光教中央駅を通過して揺れるとき、相美の手の甲が敏洙の指先に触れた。
これは何だ? 敏洙は思った。 なぜ妻とはできないことが、見知らぬ誰かとのたった一度の接触で胸を高鳴らせるのか。
偽善と欲望の隙間
瑞妍が知らない事実がある。 敏洙は毎週帰宅途中、路地裏の小店に寄り、「正規品」と書かれた錠剤を買う。次男が生まれて折れたプライドを立てる最後の砦。
しかし家に帰ると、静かにトイレへ。妻に気づかれぬよう飲み込む。それだけ。
クリスマス・イブ、空気読みゲーム
敬俊・慧珍夫妻は昨年クリスマスに「スペシャルイベント」を準備した。ホテルの予約、子どもを実家に預ける、ワイン。完璧だった。
しかしベッドに横たわって互いを見つめた瞬間、慧珍の体が強張った。
今、キスをせがんだら、敬俊に断られたらどうしよう?
不安で震える慧珍はスマホを手に取った。敬俊も同じだった。空気読みゲームは深夜2時まで続いた。クリスマスは静かに過ぎ去った。
高級オフィス、9階廊下
ソウル某所のオフィス。敏洙と相美はついに向き合った。息遣いだけが行き交う狭い廊下。指先が触れそうになった瞬間、敏洙は後ずさった。
「あ…降りますか?」
たった一言で、すべてが冷めた。
炎が私たちの内側だけにあるわけではないこと
なぜラウンド2が怖いのか。 単なる疲れではない。
セカンドが 私たちの間に火が点き得る 証拠になってしまうから。 その火が夫婦の内側だけでなく、 どこへでも はねる可能性があることに気づかされるから。
だから意図的に火種を消す。ラウンド1だけで、目を閉じ、お互いの欲望を 最初のように という嘘で覆い隠す。
君は今も、下腹でちろちろと燃えている火種を持っているだろうか。 ドアの前で一歩を踏み出せなかったあの瞬間、君も私も、まだ熱くなかっただろうか。