「今、誰のこと読んでるの?」
画面に降り注ぐ一行の通知。
[ジフン] typing...
チャットルームに私ひとりじゃない。スジン、ユラ、ジア――四人のニックネームが並ぶ。私は「ナヨン」という名前で、最後尾にいる。
彼が送る一文は、いつもこう鮮やかに始まった。
「今日も君の匂いがする」14文字。
けれど、誰が最初に受け取り、誰が最も熱く反応するか。その計測はいつも彼女の頭の中にあった。
私はそこで気付いた。これは恋愛じゃなくて、リアルタイムランキングなんだ。
ランキング0位の男
曖昧な関係で最も刺激的な餌は、セックスだけじゃなかった。
誰がより熱いかを曝け出す、冷たいリアルタイムスコアボード。
ジフンが送る一行のメッセージが届くと、四人の女性は同時に画面を赤く染める。
そしていつも――
'スジンさんが最初に読みました'
この文字が浮かぶ瞬間、私はもう一歩遅れていた。
彼女は0.3秒でスタンプを押し、0.5秒で「愛してる」と返信した。
私はそこで知った。私は1位になれない。0.3秒後、あるいは1.2秒後。そのわずかな時間差が、私ではなく「彼女」であるという証拠。
“ナヨン”の計算
ナヨン(28・UIデザイナー)は最初はシンプルだった。“軽い恋”だと何度も自分に言い聞かせた。
でも、ジフンが送る「グッドナイトキス」が別のニックネームの横に先につく瞬間、彼女の頭は雪のように冷えていった。
真夜中、彼女はこっそり別垢を作った。名前は「ジア」。
新しいプロフィール画像、新しい話し方、新しい時間帯。そして改めて招待状を送った。
入ってみると同じスコアボードがあった。ただ今回は「ナヨン」が2位に表示されていた。
もし私が2位なら、1位は誰?
彼女は果てしなくスクロールした。でも1位はいなかった。ただ「オンライン」の表示が瞬く空虚さだけ。
“ジフン”の庭
ジフン(32・フリーランス写真家)は実はランキングを作るつもりはなかった。ただ、一人じゃなく四人が同時に自分に群がる光景が面白かっただけ。
けれど彼も、いつの間にか自分が作り出した庭の花びらの枚数を数えていた。
四人のうち誰が最も熱く応えるか、誰が最も長く待つか。
撮影機材を抱えて出張に出る日、最初に「ユラ」が「いってらっしゃい」と送った。0.7秒で。
それを確認した瞬間、彼女のニックネームの横にハートが一つ生まれた。
そのハートはナヨンにはなかった。
欠如の餌
なぜ私たちは0.3秒の差に取り憑かれるのか。
心理学者は言う。“複数選択の中の競争”は人間の最も古い勝利本能を刺激すると。
でもそれは見た目にすぎない。
本当は私たちが欲しいのは、単なる1位じゃない。
他人が持つ0.3秒を奪った瞬間、あの人の視線が私に注がれるという錯覚。
まさにその錯覚に私たちは嵌る。
曖昧な関係は、相手とのセックスより、相手の視線が「私」に留まる0.1秒を確保するゲームなんだ。
だから私たちはより速く入力し、より熱く反応する。
でもその視線は実はいつも次の人の名前を待っている。
あなたはまだランキングをつけている?
チャットルームには五人のニックネームが浮かんでいる。
あなたは未だ最後尾にいるかもしれない。
でもそれはあなたの負けじゃない。ただあなたはまだその0.3秒を追っているだけ。
次のメッセージが届けば、あなたは必ず画面を叩くだろう。
そして今度こそ自分の名前が一番上に来ることを願う。
でも、それを先に読むのはまた別のあなたかもしれない。
画面に再び通知が降りる。
[ジフン] 今日も君たちが一番気持ちよくさせてくれる
そして0.2秒で――
誰かのニックネームが最初に瞬く。
あなたはそれが自分じゃないと知りながらも、指先を動かす。
なぜだろう。