「心配すんな、俺にも同じことさせられたんだよ。」 画面越しに放たれた一言が胸の奥を鋭く突いた。つまり、あなたが最初じゃなかったってこと? あの日も、今日も。誰かの首筋に顔を埋めながら、同じように枕を濡らしていたんだって。
かすむ灯りの下で
2013年3月、ソウル・新村の下宿屋の屋上。春の雨が屋根を叩くたびにスタンドの電球がちらついて消えた。あの日もそうだった。灯りが消えた瞬間、私はミンソクの親友ジェヒョクの手首を掴み、廊下の奥へ引きずった。
これはただの過ちじゃない。 ミンソクはすぐに気づいた。幸いジェヒョクは3秒で私を突き放したけれど、私たちの関係にはすでに終わりが刻まれていた。
私は明け方、バッグを抱えて下宿を飛び出した。 「お前が始めたんだ、終わらせるのは俺だ」ってミンソクは言った。 その“終わり”がこんな風に10年後に姿を現すなんて、思いもしなかった。
私たちは誰も、目立たないように罪の代償を払う
ミンソクは今、私の隣に住んでいる。正確には、私たち夫婦と、彼ら夫婦を含めた“私たち”だ。同じマンションの501号室と502号室。朝のエレベーターで出会えば、私たちは互いのパートナーを抱き寄せてすれ違う。
彼は私の夫の上司。私は彼の妻とジムの同期。四人の視線が交差するたび、私はあの下宿の廊下を思い出す。
あなたも覚えてる? あの廊下で揺れた空気の匂いを。
欲望は回転木馬のようにやってくる
去年の夏、ミンソクの妻・ジョンユンがハウスウォーミングに誘ってくれた。ワインを三本空けた頃、ジョンユンがおずおずと聞いた。 「大学のとき、ミンソクが誰かにひどく傷つけられたって聞いたことある? あなたじゃない?」
スプーンがテーブルに落ちた音がした。私は笑って答えた。 「あら、私は知らないわ。」
その夜、玄関を閉めた途端、私は夫の胸に顔を埋めた。香りが違った。シャンプーの香りではなく、ジョンユンのクレンジングオイルの匂いがした。
そう、私たちはみんな同じ香りに馴らされているのね。
実話のように読めるふたつの部屋
部屋その1 2月14日未明・地下駐車場
CCTV映像は02:14、二台の車が同時に入庫するのを捉えている。黒いSUVと白のセダン。ミンソクの車と私の車だ。02:27、お互いのトランクを開けて荷物を交換。食料? プレゼント? 違う。
ミンソクが持ち去ったのは洗濯かご。私が持ち帰ったのはジョンユンのレインコート。私たちは、パートナーが眠っている間に、洗濯物を交換し合った。
「これってゲーム?」 突然聞こえた声。 「それとも、自分の罪の代償を払う方法?」
部屋その2 11月3日午後
ジョンユンはジムのシャワールームで泣いていた。私は知らないふりで更衣室へ入り、ガラス越しに聞こえた。 「主人が毎週水曜に有給を取っている。誰かに会っているのは確実……」
私はその水曜、ミンソクにLINEを送った。 私: もう一度、始めようか? ミンソク: ……うん。
私たちはモーテルで再会した。ベッドシーツがミンソクの家と同じ柄で、私は笑いが止まらなかった。彼が私の肩を撫でるたび、私はジョンユンの顔を思い浮かべた。
彼女もこの感覚を知ることになるのかしら。
なぜ私たちは同じ過ちを何度も繰り返すのか
心理学者はこれを「誤った一致欲求」と呼ぶ。過去の罪を繰り返すことで、それを清算しようとする歪んだ生存本能。私たちはミンソクと私、それぞれのパートナーを裏切りながら、あの下宿屋の屋上で走り抜けた終わりへと向かっている。
でも本当の欲望は別にある。私たちは互いではなく、*「あの日の私たち」*に会いたいのだ。 22歳、春の雨に打たれながら灯りの消えた廊下で手を繋いだ熱いふたり。そして今、その熱をみんなに分け与えようとしている。
あなたの裏切りはいつ始まったの
ふと頭をよぎる人はいないだろうか。あなたが先に傷つけた日、あるいは先に裏切られた日。その記憶が、ベッドごと、エレベーターごと、職場の飲み会ごとにそっとついてくるだろうか。
ならば今、誰かを犯している瞬間、それは復讐なのか、それとも終わらせられなかった罪の延長なのか。
あなたは今、どの廊下の奥で、誰の手首をもう一度掴みたいと思っているの?