顎先に溜まったミルクの一滴
「本当に冷めちゃったね。」
ユンソルは一か月前に生まれた赤ちゃんに授乳しながら呟いた。ベッド脇で膝を抱える彼氏―いや赤ちゃんのパパ・ミンジェは目を逸らした。
妊娠したって告げたときに熱かった唇は、どこへ消えたのだろう。
赤ちゃんはまだ乳首をうまく咂えず、ミルクが溢れてユンソルの顎伝いに流れる。冷たい空気で固まりかけたミルクの雫。それだけだった。
ミンジェはそっと手を伸ばしかけ、赤ちゃんの髪を撫でるふりをしてやめた。そこから温もりはすでに逃げ出していた。
赤ちゃんの匂いに残るファーストキスの残り香
ママになる前、彼女は2階のPCバー裏口で初めてキスをした。アイスアメをひと口飲んで戻ってきた彼が口いっぱいに残した甘さは、今でもユンソルの歯茎に突然蘇る。
その甘さは、母乳の匂いと混じって腐った卵のようになった。育児室で24時間まみれになるうち、彼はミンジェの体に染みついた煙草の匂いを嫌いになった。
理由は単純だった。
ミンジェは昨夜、赤ちゃんの泣き声に耳を塞いで出て行った。戻ってきたのは深夜3時17分。出産後初めて迎える3時17分。粉ミルク1すくいと乳首消毒の合間に、愛は本格的に冷め始めた。
いちご味のチンチクと乳しぶきが広がったミンジェの肩
発信者:ソ・ユンソル(19)
宛先:キム・ミンジェ(20)
内容:今日は離乳食始めるよ
短文だった。ミンジェは3時間後に「どうして?」と返信し、ユンソルは赤ちゃんがひと息ついている7分間、ベッド端に座って呟いた。
「もうミルクやめたら、あなたに触られなくていいでしょ。」
赤ちゃんはまだ「ママ」も発音できないが、ユンソルはすでに22回「ママ」をカウントしていた。
ミンジェが2週間ぶりに赤ちゃんを抱いたとき、赤ちゃんは泣いた。ミンジェの肩に母乳が飛び散った。いちご牛乳味の母乳だった。それを見てユンソルはふと思った。
この匂いをパパから嗅がせるのも、赤ちゃんにとって不幸なのだろうか?
ファーストセックスと粉ミルク1すくいの間で
人はなぜ冷めていく温度に執着するのだろう。
赤ちゃんを産む前、俺たちは毎晩こっそり会った。PCバー裏口、コンビニ屋上、カラオケトイレ。熱い場所にはいつも俺たちが先陣をきった。
その熱さを冷蔵庫に入れられるなんて想像もしなかった。赤ちゃんを産んでみると、すべての熱は哺乳瓶消毒器の中にあった。殺菌温度100℃。でもミンジェとのキスは36.5℃を超えない。
たった10か月前、俺たちはファーストセックスに酔っていた。今は粉ミルク1すくいをすくう8秒がすべてだ。
8秒のうちにミンジェはスマホのアラームを確認し、ユンソルは赤ちゃんの息遣いを聞く。
愛し始めた頃、俺たちはお互いの痛みを知らなかった
関係が冷めるということは、お互いの痛みを知ってしまったということかもしれない。
ママになった日、ユンソルは知らず知らずミンジェの母を思い出した。幼い頃に捨てられたという事実をやっと話してくれたときがあった。そのときミンジェは泣かなかった。ただ窓の外を見ていた。
赤ちゃんが初めて微笑んだ日、ミンジェはその笑顔を見てふと言った。
「俺のママも、こうやって俺を見てたんだろうか。」
そのとき初めてユンソルは知った。愛が冷め始めたのは、お互いの痛みをさらけ出した瞬間からだった。
俺たちはお互いの傷を覗き込む勇気が、それだけなかった。
あなたは今、どんな温度を求めている?
心理学者は言う。ティーン期に親になったカップルは、親の役割と恋人の役割の間に挟まってしまうから、熱くも冷たくもない「温度なし」に留まると。
でも俺たちが見落としているのは、その「温度なし」が実は最も熱い熱病である可能性があるということだ。
ミンジェは昨夜、赤ちゃんの頭の上に手を乗せて、音もなく泣いた。ユンソルはその後ろ姿を見て初めて思った。
何が冷めたって言ったのだろう。愛なのか、それともただお互いを知らなかった時間なのか。
赤ちゃんは初めての歯が生えるけど、愛は今日も
ユンソルはミンジェにメッセージを送った。
発信者:ソ・ユンソル(19)
宛先:キム・ミンジェ(20)
内容:赤ちゃん初めての歯が生えた。どっちが先に触ってあげる?
ミンジェは返信がない。でもそれは、赤ちゃんの初歯を見逃したからではない。彼女が言った「どっち」ではなく「私たち」という言葉を、まだ使えないからだ。
愛が冷めたって言うとき、本当に冷めたのか。それとも熱さを受け止める勇気さえ冷めたのか。
あなたの愛は、今何度?