あの夜、君が不在着信を7回も残した理由は何だったのだろう。
1. 0.2秒の沈黙、熱いスプーン
1,460日目、いつもと同じベッドで眠りにつく直前、ミンジの喉が震えた。 「ねぇ…犬、飼わない?」
カルボナーラをすくっていたテヒョンのスプーンが0.2秒だけ凍った。チーズがねっとりと糸を引く間に、彼の瞳が揺れた。
“犬”という単語は、すぐには「毎朝、毛玉とうんちの匂いを洗う日々」を連想させなかった。それは“深夜3時、君の髪の香りを鼻先に纏ってまた眠りたい”という17禁の合図に聞こえた。
あのとき、君は本気で頷いたのだろうか。
2. 白い毛並みに滲む黒い欲望
2023年4月13日朝8:17。ミンジはテヒョンの家の洗濯機の前に座っていた。昨夜映画が終わった後、つい眠ってしまった。
「今日だけ時間くれない?」 「だめだって、会社に遅刻する」 「30分だけ…」
返事はなかった。代わりに洗濯機の上に置かれた白い毛並みが目に入った。
これ、私が育てるんだ。
そう思った瞬間、4年よりも1日多く責任を負わなければならない命が、あっけなく軽くなった。
白い毛の間に黒い欲望が滲む――「責任の取れないモノ」を通して君を手放したいという、汚い欲望。
3. 保護施設、名も知らぬ湿った吐息
同月27日、ミンジはひとりで京畿道加平にいた。「幸せ」と名付けられた茶色のミックス犬が彼女のズボンの裾を噛んだ。
犬は何も言わなかった。ただ熱い息だけが肌をくすぐった。
あなたも誰かに捨てられたのね。なら、一緒に暮らそう。
車でテヒョンの家に向かう間、ミンジの手のひらはひどく湿っていた。玄関に着いたが、エンジンを切れなかった。 47分12秒。窓越しに見えるテヒョンの部屋はカーテンが閉まったまま。 「幸せ」は膝の上で小刻みに震えた。
私たちが別れたら、この子は誰の味方をするのかしら。
4. 欲望の解剖、舌の先にある真実
ミンジは後日ブログにこう綴った。
本当は犬を買ったわけじゃない。「別れの覚悟」を買っただけ。
彼女が本当に欲しかったのはペットではなかった。 「責任の取れない命」――それは関係の死に直面する前に、互いの限界を確かめ合う最後の鏡だった。
一緒に育てて失敗しても許される、互いを再選択するための口実。 でも鏡はすでに割れていた。半年前から1日2回に減ったメッセージが証拠だった。
5. 結局重ならなかった二つの手
テヒョンはミンジが連れてきた「幸せ」に結局会わなかった。 LINEの一行だけがやってきた。
テヒョン 犬の名前は? ミンジ 幸せ。 テヒョン そうだね。幸せでないと。
画面が消えた瞬間、ミンジはスマホをギュッと握りしめた。手の甲に血管が浮き出た。
あの夜、不在着信7回は「幸せのため」ではなく、1,460日目の熱いベッドに残った体温を最後まで死守しようとしたがだった。
6. まだ乾かぬ吐息
「幸せ」は今でもミンジのワンルーム中央で熱い息を吐き続けている。
朝になるとミンジの指が犬の毛を撫でるたび、彼女はふと思う。 この手が触れているのが君だったら。
そして犬は知っている。 自分が実は**「愛が終わったあとも乾かぬ欲望」の実体**であることを。
1,460日の恋は欲望の毛玉ひとつで終わった。そして僕たちはまだその匂いを洗い流せていない。