夜12時、玄関のスマートロックがピッと鳴った瞬間、息が止まった。テソンはまだ会社なのか、それともあの子の家なのか。私は主寝室でなく、小さな部屋の扉の前で見捨てられた匂いを嗅いだ。少しだけ開いた隙間から見える、夫のベッド。キーはなく、布団はめくれ、枕には頭の跡がなかった。その分、空っぽの部屋が胸を締めつけた。
鍵のかかった扉の向こう、息詰まる静寂
15年前からテソンは「よく眠るために」と寝室を分けた。最初はいびきがひどいから、次は出勤準備が早いから、最後にはただの習慣になった。私もそれなりに理由をつけた。でもドアノブに手をかけるたびにもう手遅れなのという囁きが耳元でくすぐった。彼が扉を閉める瞬間、私は隣の部屋で同じことを始めた。10年前から。テソンは知らなかった。いや、知っていて知らないふりをしていたのかもしれない。
私の部屋の引き出しの中、シルクのパジャマの下に隠した小さなファンタジーグッズ。夫婦という名の上で、私たちはそれぞれのタブー領域を慎重に育ててきた。罪悪感を感じていたわけではない。かえってあの人も同じ罪を犯しているという確信が私を生かしてくれた。彼の部屋から深夜2時の灯りが漏れるとき、私はベッドサイドのランプだけをつけてイヤホンを差した。
お互いの音を絶対に聞かないという暗黙の契約だった。
鍵のかからない地下室:まるで本当のようなふたつの物語
1. ユジン、42歳、49坪のマンション
ユジンの夫スンホは毎週水曜の夜遅くに帰宅する。「飲み会だ」と言って。その夜ユジンはベッドのヘッドボードに設置したミニカメラを録画モードにした。いえ、夫を監視しようとしたのではない。もし私が先に眠ったら何が起きるのかが知りたかったからだ。
深夜2時、扉が小さく軋む音。スンホは独り言のように呟いた。 「今日も……我慢した。早く入ろう。」 録音にはそのあと小さな金属音、ファスナー下ろす音、そしてすぐに静まる息遣いだけが残った。ユジンはその静止画を一枚ずつ映画に変えて想像した。夫ではなく、私を相手に。
それからユジンは自分の部屋でより大きな音で、より長い時間同じ罪を繰り返した。スンホの水曜が終われば木曜の未明にはユジンの部屋の下から灯りが漏れた。
2. スア、38歳、古びた一軒家
スアの夫ミンジェは10年前の事故以来、下半身に障害が残っている。夫婦生活は可能だが、ミンジェは自分がもはや「完全な男」ではないと思い込んでいる。だから彼は毎晩書斎で寝る。「資料探しで遅くなる」と言って。
スアは二階の屋根裏部屋へ上がる。ミンジェが使っていた旧型ノートパソコンからダウンロードした映像。画面の中の男はミンジェに似ているけれど、動きは完全だ。スアは夫の親友ジホという名前でフォルダを作っておいた。ジホの声を真似てスアは囁く。 「ミンジェは知らなくていい。私たちだけの秘密だよ。」
ある日ミンジェが足を引きずりながら屋根裏の扉を開けた。ノートパソコンの画面は消えていたが、スアの指はまだ動いていた。ミンジェは視線を逸らした。ふたりはお互いの不完全さを同じ方法で埋め合っていた。ただしスアはミンジェの書斎を、ミンジェはスアの屋根裏を絶対に侵さないという暗黙の同意を刻んだ。
なぜ私たちは「禁じられた扉」をわざと作りたいのか
フロイトは「タブーは欲望を2倍にする」と言ったが、最近の心理学はもっと深く掘り下げる。夫婦がそれぞれ部屋を持つのは単なる習慣ではなく、お互いを守るための最後の配慮かもしれない。
ふたりがひとつのベッドに横たわればすべてが露見する。息遣い、匂い、夢で漏らす言葉まで。だから私たちは迷路のような扉を立てる。
扉が鍵をかけてあれば、私は私の中の怪物もあなたの中の怪物も見なくて済む。それが私たちがお互いを愛する方法なんだ。
タブーの魅力はまさにここにある。私たちはお互いを完全に知らないという事実が私たちをより熱くさせる。同じ罪を犯しながらも「私たちはうまくやっている」という錯覚が可能になる。それが究極の親密さであり究極の距離でもある。
あなたの扉は今どこに鍵をかけられているの?
先日私はテソンの部屋の前で手にした鍵を発見した。15年ぶりにできた合鍵だった。でも私はそれを差し込まなかった。鍵をポケットに入れ、私は振り返って自分の部屋の扉を少し開けた。中はまだ熱かった。扉を閉めた瞬間思ったこと、これは実はあなたも知っている物語だ。
あなたも今この瞬間、どの扉を開け閉めようとしているのかもしれない。
それなら、あなたは果たして開けたい扉なの? それとも一生鍵をかけたままにしたい扉なの?