「ねぇ、今日私、45歳なの」
飲み会の片隅、居酒屋の路地裏でぽつりと零れた一言が、いまでも頭にこだましている。唐突に差し出された免許証。そこに刻まれた1979。僕は27歳。昨日まで彼女はただの「先輩」だった。チームリーダーの肩書に添える礼儀正しい笑顔と、スカートから覗くふくらはぎのラインくらいしか見えていなかった。数字が明かされた瞬間、脳内で雷管が爆発した。45。27歳の僕は、その差を掻き分けて奥へと滑り込みたかった。
数字を飲んだ夜
ヘジン先輩の目じりの皺は、年齢だけ深く見えた。でも僕の視線はその下へと滑り落ちた。うなじ、胸の谷間、腰のライン。年齢が刻んだ肉体は、同時に盗み見たい紋様でもあった。
どうして今知ってしまったのか。知らなければ、笑って済ませられたのに。
グラスを傾けながら、彼女は手の甲で口元を拭った。ルージュが滲む。ぞくりとした衝動が指先をくすぐった。その唇、その皺んだ目じりに触れたかった。いや、もっと奥深くへ。
盗み見る欲望の二つの顔
男だらけのチームに45歳の女性、27歳の男性。数字は容赦なく序列をひっくり返す。年齢より役職が上。それでも僕は彼女を飲み込むように見つめた。なぜ?
第一に、背徳の甘さ。社会は先輩を冒すなと静かに脅している。タブーを友にして飲む快感。
第二に、時間への貪欲。彼女は僕がまだ味わったことのない年月を抱えていた。胸も腿も声にも他人の時間が染みている。その時間を一気に掴みたい欲望。
第三に、嫉妬。彼女が「若くない」という事実が逆に僕を燃え上がらせた。これからではなく、過ぎ去った若さを想像する愉悦。
実話のような二つの夜
ケース1 – ジュノ、29歳、デザインチーム
ジュノは半年前の忘年会で知ってしまった。「リーダー級」のジョンミン先輩が43歳だと。二次会のトイレ前の廊下で鉢合わせた。
「ジュノさん、ちょっと手伝ってくれない?」
トイレの明かりに彼女の首すじの深い皺がくっきり。ジュノは指に力を込めた。その夜、彼女の家まで歩いた。何も起こらなかったが、玄関前で30秒ほど無言になった。その短い沈黙が一年間、ジュノの頭をねじ曲げた。
一歩踏み出したら、会社で生き残れないかもしれない。
その後、毎週水曜日にジョンミン先輩が着るブラウスの色をチェックする。白の日は息が詰まった。
ケース2 – スンウ、31歳、ストラテジーチーム
スンウはチ次長ミヨンと「検討会議」の名目で会議室を占領していた。彼女は46歳、離婚歴あり。書類を渡す時に指が触れた。熱かった。
「スンウさん、手が震えてる」
ミヨンが低く笑った。スンウは返事の代わりに「この中に入れたい」と飲み込んだ。
翌日、ミヨンは何事もなかったように業務指示をした。スンウは彼女の声の裏に隠された冗談めいた本音を何度も噛みしめた。
タブーを舐める舌先
なぜこの年の差を性的な緊張へと昇華するのか。答えは単純だ。絶対に叶わない未来を投影するからだ。45歳の女性と27歳の男性が紡げる未来は社会が許さない。だから熱い。
実現しない未来を瞬間瞬間で焚き上げながら、僕たちは自分の欲望を味わう。いつの間にかキス一つで崩れる虚構を愛おしむ。
会社の廊下ですれ違う先輩の香水の匂い。その香りはすでに過ぎ去った時間だ。その時間を胸に刻みたい衝動。それがすべて。
玄関先で震えた30秒
帰り道、タクシーの後部座席でひとつの考えだけが渦巻いた。僕が欲していたのは彼女の肉体ではなく、彼女が積み重ねた時間の重さだった。その重さを自分の体の上に載せて、押し潰されて死にたかった。
明日の朝、ヘジン先輩は相変わらず45歳だ。僕は相変わらず27歳。その差を埋めようともがきながらも、その溝がなければ何も感じなかったかもしれない。
数字1979年。その年に生まれた人が僕の指先の届かない距離に立っている。その不可能な距離を夢見る瞬間、あなたは今何を思い浮かべるだろうか。