フック 今日も彼は2号線に乗った
「乗車券をご確認ください。」スクリーンドアが閉まる瞬間、彼の視線はぴたりと一点に固定された。 延南駅で乗ってきた女子大生の白いスニーカーに付いた薔薇の花粉。 ああ、今日もピアスではなくヘアバンドでまとめた髪から、棒アメの甘い香りがする。 彼女は紙袋を胸に抱えていた。多分図書館でもらった無料ステッカーが貼ってあるのだろう。 この男は三十九歳。不動産営業。妻は先月第三週から離婚調停の書類を持ち歩いている。 彼が今見つめているのは単なる処女ではなかった。それは時間の透明なシルエットだった。
欲望の解剖 なぜ彼は若さを貪りたかったのか
僕は彼女の未来を削ぎ取りたかった。いや、まだ形づけられていない未来を。
若い処女を欲する男たちの本心は、単なる肉体欲望では説明できない。 彼らが本当に渇望するのは**「まだ傷ついていない可能性」**だ。 24歳の彼女は、まだ汚れていない名刺のように文字通り無限の空白。 その空白に自分の指紋を押したいという衝動。これこそ最も陰湿な権力欲望だ。 男は自分を戻せない時間の中で、彼女を先へ引き寄せ、自分と一緒に閉じ込めたい。
リアルすぎる記録 ふたりの男
1. ソウル大入口駅、2023年4月
姜民在(カン・ミンジェ)、41歳。毎日午後4時38分、ソウル大入口駅2番出口に立つ。 延世大学国語国文学科2年キム・ソヨンはその時間に必ず出てくる。最初は偶然だった。 しかし民在はソヨンが抱えていた本のタイトルをメモした。『フロイト欲望理論』。 その夜、彼は同じ本を書店で買った。 『その本を読む君の最初の一文を、僕は知っている…君は気づかないだろう。』 民在はソヨンが地下鉄から歩いてくる歩数を数え始めた。142歩。坂を上ると163歩。彼女が置くコーヒーカップの口径は7.8cm。 すべての数値をエクセルに入力した。肉体を奪うのではなく、存在全体を数値化する。
2. プサン・ヘウンデ、2022年冬
朴成進(パク・ソンジン)、37歳。彼は週に一度、ラブホのアルバイト生チェ・ユジンを訪ねた。 ユジンは25歳だったが、成進は彼女を「学生」と呼んだ。ユジンではない、でっちあげた名前。 「学生、今日も宿題した?」 「はい…先生。」 このやり取りはいつも同じだった。ユジンは知っていた。 成進が本当に欲しているのは自分のカラダではなく、まだ誰にも触れられていない最初のページという錯覚だと。 だからユジンは毎回、初めてのふりを演じた。初めて手をつなぐふり、初めてキスするふり。その演技が崩れた日、成進はお金を払って出ていきながら、ユジンの髪を撫でた。 >「もう君も汚れちゃったね。」
なぜ僕らはこれに惹かれるのか 禁忌の甘い味
処女という象徴は時間の向きに逆らって上る幻想を呼び起こす。 男たちはもう後戻りできない人生の坂を、彼女の未来を奪うことで緩和したい。 心理学者ロバート・スターンバーグは「回帰衝動(regression impulse)」と呼んだ。 大人になった自分がもう耐えきれない世界の重さを、まだ重さを知らない存在に転嫁したい衝動。 だから彼らは22歳の女子大生の胸に抱きつきながら、同時に彼女を見下ろし続ける。 僕が知る世界の終わりを、まだ君は知らないという残酷な優越感。
最後の問い あなたは誰の処女性を、あるいは誰の未来をまだ奪いたいと願っているのか
今この瞬間、地下鉄2号線のどこかに立つあなた。 誰かを見つめながらスマホに数字を記録していないだろうか。 たぶんあなたは彼女の名前さえ知らない。 ただ彼女がまだ何も知らないという事実だけで、自分の世界を少しでも保てると信じていないだろうか。 あなたは本当に彼女を欲しているのか。 それとも去ってしまった自分の若さの亡霊を、彼女の中に捕まえたいだけではないか。 >「彼女が知らない未来を、僕だけが先に知っているという事実が…僕を生かしてくれる。」 今夜も、あなたはまだ数字を数えているだろうか。 142歩。163歩。そして219番目の夢。