「絶対金髪はダメ」
リビングの明かりの下、ダヒョンが私の髪をそっとなでながら言った。 「濃いチョコレートブラウンが一番綺麗。金髪は……うるさすぎ」 その夜、私はバスルームの鏡を見た。染めが剥げて先端が黄色く浮いている。誰かの本音が漏れるように。
内側から燃え上がる色
なぜ金髪がそんなに切望だったのか。
いいえ、単なる色じゃなかった。それは禁じられた私自身。 デートの初めからダヒョンは何度となく呟いた。 「本物の金髪はキスしてるとき髪の毛が目に入るでしょ。気持ち悪い」 赤い唇を尖らせてため息をつく。なぜその言葉が歯軋りするような痛みになったのか、私にはわからなかった。 実はいた。大学時代、教養の授業で出会った先輩。あの人は私の髪を揺らして笑った。 「お前、金髪にしたらマジでヤバい女になりそう」 あの日から私は美容院の前をうろついた。婚約したダヒョンには、それが「元カレの趣味」という理由でタブー視された。
ソウンは真夜中に染めた
ソウンはひとり暮らしのワンルームで期限付き恋愛をしていた。 彼氏のミンギュは「ナチュラルが一番」と黒髪を尊重していた。 けれどミンギュが休暇で旅立った日、ソウンは美容院を予約した。 夜8時。店の明かりの下、トイレのドアが閉まる瞬間、デザイナーのパク・ジュヨンが言った。 「レベル10超えるとダメージひどいけど……平気?」 ソウンは鏡の中の黒い瞳を見つめて答えた。 「平気。むしろ今が問題なの」 2時間が流れた。一筋ずつ黄色く変わる髪。ミンギュにバレる不安より、黄金が伸びる悦びの方が大きかった。 帰り際、ジュヨンが呟いた。 「実はミンギュさんの隣にいるときのソウンさんの表情……すごく静かだった」 冷たい夜風を受けながらソウンは思った。静かで何が悪い。静かな中で燃えていたんだから。
誘惑の数学
金髪は単なる色ではない。 それは「私は別の人になれる」という宣言だ。 心理学者アーノルドは「禁忌の誘惑」という言葉を使った。 禁じられた対象ほど、その対象への欲望は幾何級数的に大きくなる。 特に恋人に禁じられた領域はそう。なぜなら、それは単なる外見を超えて「あなたの望まない私」を選ぶ瞬間だから。
私が金髪になる瞬間、私はもうあなたの理想ではなくなる。 そしてその瞬間が私を本当の私にする。
三番目の話、ジウンとジェヒョン
ジウンは結婚3年目だった。 新婚の頃、ジェヒョンはジウンの濃い茶髪をいつも撫でていた。 「うちの母さんもそうだった。安心するんだ」 ジウンはなぜその言葉が胸の奥を凍らせたのかわからなかった。 安心感。それはすなわち退屈を意味した。 去年の春、ジウンはこっそり染めた。ジェヒョンが出張で出かける朝。 美容室の椅子に座り、デザイナーに事前に用意した写真を見せた。 プラチナ金髪。デザイナーは目を丸くした。 「旦那様……大丈夫ですか?」 ジウンは微笑みながら答えた。 「大丈夫になる」 夜、ジェヒョンが帰宅した。ドアを開けてぴたりと止まった。 ジウンはリビングの中央に立っていた。黄金の髪が揺れる。 ジェヒョンの瞳が揺れた。初めて見る表情だった。 「なんで……?」 ジウンは近づき、ジェヒョンの頬を撫でた。指先が震えた。 「もう私はあなたの母さんじゃない」 その夜、ジェヒョンはジウンを初めて荒々しく抱いた。 安心感の代わりに不安感が、そしてその不安感が火花になった。
金髪の向こうの私たち
なぜ私たちは禁じられた色に惹かれるのか。 それは単なる染めではなく、関係の力関係を揺さぶる行為だ。 あなたが望む私ではなく、私が望む私を選ぶ瞬間。 その瞬間、あなたはもう私の外見をデザインできない。 むしろあなたの瞳が揺れ始める。 あなたが持っていた私を失ったんだ。
いまだに金髪を夢見るあなたへ
今この瞬間、あなたももしかしてシャンプーの泡の中で悪戯な黄金色を思い浮かべていないだろうか。 もし明日の朝、あなたが望む私に変身したら。 そして相手がその変身を許せないなら。 あなたはその関係を守るだろうか、それとも本当の私を選ぶだろうか。
そしてその選択は、実はどちらがより熱いのかを証明するものなのかもしれない。