「昨夜も同じだった。ドアノブがきしむ音に息を殺し、足音が近づくほど胸がドキドキした。彼は私がもう眠っていると信じていただろうけれど、私は布団の端を爪で掴み、目を固く閉じていた。」
彼が近づく瞬間、息が詰まった
ああ、今夜も逃げられないのか。
ベッドにはそれぞれのタブーが潜んでいる。7年の同居、結婚5年目の私にとって「私たちのベッド」はもはや「共同墓地」のようだ。
彼がシャワーを終えてバスタオル一枚でベッドの横に座る刹那、反射的に身体が強張る。手が触れる前から、息をする隙間が消える。
「どうしたの、今日も頭痛いの?」
視線を逸らしながら呟く彼の口調には当たり前が宿る。「妻だから」の重さ。その重みが私を押し潰す。
愛ではなく、生き残りの問題だった
欲望という言葉は仰々しい。でも私は単に「嫌だ」ではなく「怖い」と伝えたい。その怖さの正体を、長い間探れなかった。
そんなある日、友人スジンがグラスを傾けながら打ち明けた。
「私、夫が先に寝るのを祈ってる。そうすれば私もやっと息ができる。それでも一日中息を殺して生きてるのに、夜までそんなの耐えられない。」
その言葉に戦慄が走った。愛でなく「生き残り」とは。私たちは一体何を怖れているのだろう。
ミンジの驚くべき習慣
近所の三つ角の喫茶店で、ミンジはコールドブリューを啜りながら言った。
「私、毎日深夜2時ごろにお腹が空いて冷蔵庫を開ける。本当はお腹じゃなくて恐怖が私を起こすの。
夫がイビキをかき始めたら、そっとリビングへ出て、今日も玄関横のソファに布団一枚かけて寝る。」
ミンジの夫スンヒョンは立派な人だ。優しくて、給料もいい。でもミンジは彼の「立派さ」が恐怖の源だと言った。
立派な人を失望させてはいけないという強迫観念。その強迫がミンジをソファへ追いやる。
ヘジンのベッドの手錠
ヘジンはひと月前からベッドの横のテーブルに手錠を置いている。夫がSMグッズだと勘違いするほどのそれは、実はヘジンが作った「最後の盾」だった。
「あの日もそう。夫が後ろから抱きしめようとした瞬間、鳥肌が立った。『今日は本に無理』って言ったのに、手が私に伸びてきた。だから手錠をかけた。自分の手首を自分で繋いだの。」
ヘジンは笑って付け加えた。
「あれ以来、夫は私を『変態』って呼ぶけど、手錠をすればそれでも眠れるから。」
私たちが怖れるのは「許された身体」かもしれない
結婚という制度は「合法的な身体接触の権利」を与える。その権利があまりに当然で、拒否する言い訳が見つからない。それが恐怖の正体だ。
「今日は無理」って言ったとき、相手の顔に浮かぶ寂しさ――その寂しさが私を犯罪者に変える。
すべての回避は、強制された許しへの反逆かもしれない。社会は夫婦のセックスを「義務」と呼び、その義務を拒否すれば不倫、無関心、破局のレッテルを貼る。
だから私たちは身体を避ける。身体を避ける代わりに、眠りを避け、息を避ける。
あなたは誰の許しなしで眠ることができるか
ベッドはもう戦場だ。互いへの微妙な視線、息遣い一つで強張る肩、ドアノブを回す手にふくらむ胸。
今夜、あなたは誰の許しなしで眠る権利を持っているだろうか。
いや、それすら要求したことがあるだろうか。
息をする場所を守るために、私たちは結局誰を裏切らねばならないのか。