恋愛心理研究所 愛と恋愛の心理学

47分の隙間、彼がドアノブを回すとき

夫が出張中、玄関前の47分空白。欲望が音もなく体温に変わるまでの静寂。

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鍵は相変わらずベランダの鉢植えの下に隠してある。土が湿っているほど、鍵はより深く潜む。夫は2時間前に飛行機に乗り、家の中はまだ彼の飲んだコーヒーの香りがしっかりと残っている。そして今、手にしたスマホには『到着したよ』という短いメッセージが一つ。

ドアの前、47分。時計の秒針が落ちる音まで聞こえる。彼はいつも47分後に来る。なぜ47分なのか、私たちは口にしない。それは夫が乗った飛行機が離陸して雲の中に消える時間でもあり、私が最後に送ったメッセージが「気をつけて」から「到着したら連絡して」に変わる時間でもある。 タッ―― 足音が階段に響く。まだ下の階のようだ。私はベランダに歩み寄り、土に触れる。土が指の間に染み込む。まだ温かい。夫が朝、鉢植えに水をやったから。その水はまだ鉢から溢れ落ちていない。彼はまだ帰宅していないということだ。 そろそろと。 階段を上ってくる足音が途切れる。ドアの前だ。息遣いが聞こえる。とても細く、熱い息が染み込む。ドアが開くまで耐えられそうにない。

最初の視線は首筋をかすめる。私はドアノブを回す。指先が滑る。手の甲に力が入る。ドアが開くと同時に、彼の息が私の首筋に触れる。まだ何も言わない。ただ視線が、とても遅い視線が、上着のボタンを一つずつ解いていく。 「来たね。」 一音節。それで十分だ。視線が怒りのように感じられる。私は先に目を逸らす。玄関のシューズラックに夫のスリッパがある。その隣に、彼の黒い革靴が置かれる。重ならない。互いを認めない。壁に掛けられたコートハンガー。私は彼から目を離し、淡い色のコートを掛ける。爪先が床に触れる。息がより近づく。まだ何も触れていない。しかし、すでに肌は彼を覚えている。首筋、手首の内側、そして唇の真ん中。

47分は完全な密室になる。リビングの明かりは消えている。テレビは黒い画面の上に私たちを映す。ソファに座る。反対側の端に座る。膝が触れる。まだ言葉はない。彼は頭を下げて、私の手の甲を見つめる。手の甲には夫からの贈り物の指輪がある。彼は指輪を見る。私は指輪を感じる。指輪は冷たい。手は熱い。息が近づく。額に触れる。まだ唇は触れない。息遣いだけが先に重なる。罪悪感がじんじんとする。しかし、それは罪悪感ではない。それはこの瞬間を終わらせられないかもしれないという恐れだ。 最初のキスはとても軽い。唇が触れるだけで、息だけが絡まる。しかし、それで十分だ。すでに体は震えている。ソファの背もたれに頭を預ける。彼の手が、とてもゆっくりと、私の膝の上に乗る。まだ下着は脱がせない。ただ膝の上に手を置いて、圧力だけを調節する。

沈黙は次第に濃くなる。彼が先に立ち上がる。廊下を歩く。寝室のドアの前で立ち止まる。私は後に続く。ドアノブを回さない。彼が振り返る。背中が壁に触れる。額に汗が浮く。まだ言葉はない。ただ息遣いだけが深くなる。彼の手が、とてもゆっくりと、私の腰を包む。指がブラウスのボタンの間に入る。ブラウスが揺れる。ボタンが外れる。一つ、二つ。まだ下着は見えない。ただ首筋が露わになる。彼が息を吸い込む。私の髪の匂いを嗅ぐ。とても近くから、とても長く。

47分は終わりに近づく。時計が46分を指す。まだ1分残っている。彼は一歩後退る。私は一歩前進む。まだ言葉はない。ただ視線だけ、とても短い視線だけが私の体を這う。彼が頷く。私も頷く。彼が振り返り玄関へ歩いていく。私はその後ろ姿を見る。ドアが閉まる瞬間、息が弾ける。ベランダの鉢植えの下から鍵を取り出す。土が少しだけ増えている。夫のコーヒーの香りがまだ残っている。時計は47分を指す。何もなかった。しかし、体はすでに彼を覚えている。

沈黙が再び訪れる。夫が帰ってくる日、私はいつも同じ夢を見る。ドアの前で彼に出会う夢。夫ではなく、彼に。彼は言う。

「もう終わりにしよう。あなたの旦那が帰ってきたじゃないか。」 私は答える。 「だから私はどこへ行けばいいの?」 ドアは閉まり、私は誰もいない部屋に一人で立つ。47分の隙間はそうして再び訪れる。夫がいない4泊5日、私の体を駆け巡るのはむしろ私自身への怒りだ。なぜ彼を引き寄せたのか。なぜ切れないのか。なぜ夫に打ち明けられないのか。答えは冷たい。罪悪感がなければ私は消えてしまう。 どんな存在も、どんな感情も、どんな繋がりも。私はこの穴の中にしか実在しない。夫が去った場所、彼が占められない体積だけ広がった空虚。そして私は再び47分を待つ。土が乾き鍵が露わになるまで。

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