4年ぶりに差し出された1杯のアメリカーノ
江南駅の地下街、薄ぼんやりとしたネオンサインの下。 ドヒョンが近づいてきた。左手に持ったアメリカーノがかすかに揺れた。 厚く乗ったフォームの上に伝わる微細な震えが、黒い輪郭を揺らめかせる。 彼は一歩手前で立ち止まり、鋭く光る視線を向けた。
「あれ、本当に君なの?」
瞬間、1460日前のあの日の湿り気、匂い、冷たい空気が一斉に噴き上がった。 私たちの間はわずか一歩だったけれど、その隙間に4年がぎっしり詰まっていた。 私はまだあの日の傷を抱えたまま立ち尽くし、彼はその傷を鋭く読み取っていた。
ドヒョンは何も言わずにコーヒーを差し出した。手の甲に青い静脈がぴくりと浮き上がる。 私はそれを受け取らなかったけれど、指先が先に反応した。 肌に広がる震え、熱さより先に感じたのは心臓がどすんと落ちる感覚だった。
あなたの傷はいったいいつまで生きているの?
時間は薬だと言う。でも、誰もその薬がどんな種類かなんて教えてくれなかった。 腐った傷に塗られる麻酔だってことは、誰も明かさなかった。
「もしかして、私だけがまだこの痛みを抱えたまま、新しい人の手すら拒んでいるのかしら?」
ドヒョンはあの夜、私を捨てた。でも、私が捨てたのは彼以上のものだった。 それから出会う誰とも夜を明かせなかった。 誰かの手が私の腰に触れるたび、4年前の感情が風船のように膨らんだ。 「この人もいつか私を離れるに決まってる」 その予言ひとつが、すべての恋を最初から干からびさせた。
スジン、32歳、「もう恋なんてしない」と演じている
スジンは確かに誰かを好きだった。会社の後輩チャニョンだった。 帰り道で一緒にビールを飲み、週末は映画を観て、ゆっくりと手と手を重ねた。 でも彼の手がスジンの手首をそっと握った瞬間、スジンは血の気が引いた。
チャニョン:「スジン、僕と本気で……」
スジン:(顔を背ける)「ごめん、今日急に仕事が入っちゃって」
彼女は飛び出した。もう4年前、ドヒョンが手首を掴んで「ごめん」と言った場面と重なったから。 痛みが神経の先にまだ生きているみたいに、心臓がどくんどくん鳴った。
数日後、チャニョンがメッセージをくれた。 「大丈夫?最近ちょっと様子変だよ」 スジンは画面を強く押し付けた。 「私はいったいあとどれだけ痛まなきゃいけないの」 結局、メッセージは送信されなかった。
もう恋なんてしない、それは本当じゃない
なぜ私たちは終わった関係の影を抱えて、生きている誰かを突き放すのだろう。 心理学者たちは言う。未解決のトラウマだって。 終わらないことを頭の中でぐるぐる回す病。 終わらせられなかった会話、受け取れなかった言葉、もう二度とない終わり。
でも私は、もっと暗い理由を知っている。 また恋に落ちることは、4年前のようにまた捨てられることを意味するから。 私たちは傷ついた自分をこれ以上さらけ出さないために、*「傷を抱えたまま」*生きる選択をする。 痛みの代わりに孤独を選ぶのだ。
「もしかして、私は今痛みを選んでいるのか。痛みを避けようとした結果、もっと大きな孤独を選んでいるのか?」
テヨン、29歳、曖昧から逃げる練習中
テヨンは合コンで知り合った人と3回目のデートを控えていた。 相手は気取らず無難だった。テヨンは次第に惹かれていた。 でも3回目が近づくにつれ、テヨンは息が詰まった。 *「次は手を繋ぐかも」*そのひと思いが彼女を苦しめた。
テヨンの日記:
3年前、私は彼を離したくなかった。だから先に離れた。 今のこの人も私を離れるんじゃないかと思って、私は先に離れている。
彼女は結局メッセージでキャンセルした。 「申し訳ないけど、私まだ準備できてなくて」 そして削除した。
彼女はまたひとりで家に戻る道で、ふと思った。 「準備できてないのは、恋じゃなくて二度と傷つかないことだったのかな?」
あとどれだけ痛めば、また誰かを抱けるのか
この問いに答えはない。ただ確かなのは、私たちはまだ痛みながら生きているということ。 そしてその痛みを隠そうとして、新しい痛みを作っているということ。
もしかして、また誰かに出会えるのは、痛みが消えるときじゃなくて。 その痛みを誰にも隠さず、少しずつ見せられるようになったときなのかもしれない。 だから傷を見せることは、恐怖の演技ではなく、勇気の始まりかもしれない。
「それでもあなたは、まだ痛みながら手を差し伸べられるか。痛みの代わりに、また生きていることを選べるか?」