恋愛心理研究所 愛と恋愛の心理学

365日目、誰にも触れられない私の平穏

1年間誰も愛さない私たちが語る平穏の裏側――欲望と力の甘く危うい香り

欲望の空白タブーの平穏独身女性心理拒否の権力関係温度
365日目、誰にも触れられない私の平穏

「ごめん、今日は手も繋がない」

カフェのテラスで煙草をくわえながら、私は思いがけずその男の手に空の紙コップを押しつけた。彼はうろたえた笑みで「ここで?」と聞いたが、私はすでに視線を別の場所に移していた。1年間誰も抱かれていない私は、他人の手を自分自身よりも切実に遠ざける練習を、すっかり体に染み込ませていた。


指先が擦る空白

本当に欲しかったものは何だったのだろう。誰も触れないこの平穏の中で、私は再び誰かの欲望を逆さに吸収しているのか。

365日。正確に8,760時間、誰も私の身体に触れなかった。最初は突然の停電のような静寂だった。誰かの息遣いが耳の奥に染み込まないベッド。舌の上に味も残さず乾いた唇。消えたのは皮膚の熱だけではなかった。私が相手に与えていた微かな力も。

彼が先に欲望を見せれば、私はそれをゆっくりと拒絶しながら高みに昇る練習をしていた。「今日は遠慮して」。一言で相手はそっと身を引いた。その瞬間が私の最強点だった。

けれど、その強さも今や振り払う相手すらいない。誰も私を欲さなくなったので、もはや拒否することもできない。


かろうじて抉り出した二つの記憶

ジウの沈黙契約

ジウ(32)は去年の春、長年の恋人と別れて私のもとへ来た。彼女はシャンプーの香りの強い髪を一気に切り、このところ唯一接した異性は美容室の店長だと言った。

恋愛が終わって最初の一週間は何かが欠けていると感じたわ。二週目からわざわざ外出する理由がなくなって。一ヶ月目の朝、ふとベッド脇のテーブルに置いてあったコンドーム一箱を見たの。有効期限が三ヶ月残ってたから全部ゴミ袋に突っ込んだ、その時が本当に『終わった』って実感した瞬間だった。

しばらくの間、ジウは強迫のように男性同僚との会話を録音していた。昼食時に流れた「彼女、セックスの前にシャワーしないの?」という冗談も、退勤時の地下鉄で聞こえた飲み会の約束も。うつむいている間、彼女は彼らが誰かの欲望の対象となる瞬間を静かに観察していた。

彼らが私を見ないことがとても好きだった。私はもう誰かの視線に縮こまる必要がないって、最初は解放に感じたの

エラの冷蔵庫実験

エラ(29)はデザイン会社に勤め、328日間何の関係も結んでいない。彼女は冷蔵庫の扉に赤いマグネット数字を貼って日々を刻んだ。100日を過ぎると数字ではなく**「使用中止」**という文字に変わった。

最初は誰かと目が合えば視線を逸らした。地下鉄で肩が触れれば全身が硬直して、会社の部門飲み会も欠席した。でも200日を過ぎると、逆に男性が私を避け始めたの。『あの子、ちょっと変』って顔が丸見えで。それがとても可笑しくて、つい一人を選んで一ヶ月間目だけ合わせて歩いた。ただの目線だったけど、彼は最終的にエレベーターで逃げ出したわ。

エラは会社の同僚のマウスパッドを盗み、半年間手のひらで押しつけ続けた。男性が使っていた物に自分の体温をそっと残しながら、相手がそれを使えなくなるように仕向けた。彼女は執着を否定しなかった。ただ執着の向きが徹底的に『拒否』へと回帰しただけだ。


空白の微塵

心理学者たちは『欲望の空白』を簡単に「リビドー抑制」と呼ぶ。正しい言い方だけれど、私たちはここからもっと暗い地点を捉えている。すなわち力の転倒だ。 関係で相手の欲望を確認し、それを拒絶することで自らを能動的な位置に立てること。しかし誰かを欲しなければ、欲する者を生み出せない。 だから私たちは逆さの欲望を練習する。相手に欲させないようにすること。私を見ても、私を欲できないようにすること。

この平穏はいつまで私を守ってくれるのだろう。誰も私を欲さないこの静けさの中で、私は果たして再び誰かの執着の対象になれるのだろうか。


最後、ドアの前に立つあなたへ

もしもあなたも今、誰かの欲望を再び受け入れる覚悟があるのか。それとも私のように365日目、誰かの手の届かないこの平穏を守りたいのか。

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